おやじの館アーカイブス
Vol.4 1998年8月
参加者は、お客さんのK氏、N氏、W氏と私大蔵です。

『おやじの館』Vol.4

私.「今日は私が所有しているギターの中で一番好きなギターを持ってきたんですが、'53のEsqureです。」

K氏.「こりゃ、年期が入ってる。」 K氏弾きながら「良く鳴るなー。この太いネックがまたしっくりときて良い。」「音も太い。」

私.「とにかく良くできていますよ。材も何もかもね。ナットとフレットは減って交換しましたが、他に何も痛んだ部分は無いですよ。元気に鳴っています。」「セレクターひとつにしても50'SのCRLセレクターはほんと丈夫ですから当時のままです。」

K氏.「今のものとは違いますね。」

私.「基本的構造は同じですが、作りがとにかくがっちりしていますから今だにガタは皆無ですね。もちろん、接点の部分は減り続けるのですから何時かは使えなくなるのでしょうが、私が所有してからでも10年程経ちますが普通 に使っていてこの状態ですから。」

K氏.「カチカチと切り替わるのが気持ち良い。」

私.「金属の剛性の高さとか、ベースのペイクライトとか、作りの良さとかから来る全体の剛性が今のものと明らかに違いますね。」

N氏.「Esquer(以下EQ)の配線ってどうなってるの。」

私.「リアがストレート、センターにするとトーン回路が繋がってトーンが利くTelecaster(以下TE)リアのポジションと同じ、フロントにするとハイカットです。」

N氏.「リアとセンターのポジションはわかるけどフロントのハイカットの音っていうのはどうして。」

私.「この頃TEもフロントのポジションはハイカットでリアはリア、センターはフロントのみです。」「私も、当時これを考えた人に会って聞いた事がある訳ではないのでなんとも言えませんが2つ考えられる理由があります。」「ひとつは、何かで読んだのですが、'48年当時はもちろんあの音楽に革命をもたらしたエレクトリックベースは存在していませんでしたから( 注.50年代にプレシジョンベースが出るまではウッドベースしか存在しません。)ベースの代わりにベースの音をエレクトリックで出せるようにと考えたというもの、もうひとつは、戦前初めてエレクトリックギターはピックアップは1つで、とにかくギターの音を大きくしてより広い場所でより多くのオーディエンスに演奏を伝えたいというのが目的でしたからそれで良かった。ところがピックアップは取り付け位 置で音色が違うということは直ぐに分かったでしょう。そこで、ピックアップを違う位 置に2つ付けたらエレクトリックを使ったサウンドが多彩になると考えるのはごく当たり前ですからピックアップを2個付けた。さらにそれぞれトーンが利くようにして、さらにフロントには固定トーンを付けて音のバリエーションを増やしたという考えです。EQも1ピックアップでも多彩 なエレクトリックサウンドが出る様にということでそうしたと。後のグレッチにも固定トーンがありますしね。」

K氏.「今のような回路になったのは60年代になった頃ですよね。」

私.「そうですね。そうするとその頃はプレベが出ていましたから必要無くなったので止めた。となるとベース説かなとも思いますし。TEより後に出たGibsonの2ピックアップのギターはフロントとリアのピックアップを混ぜることで多彩 なトーンを得ようとしましたから、( 注.ただしストラトに対抗してと思えるES-5スイッチマスターの様な回路のギターも出していますが。)それに対抗してとも考えられる。その後、混ぜてさらにプリセットも付けたジャガーの様なギターも出ますしね。私はトーンじゃないかと思うんですがどうなんでしょう。」「大体フェンダーはストラトまではピックアップを混ぜて使うという考え方はしていませんから、ギブソンに対抗してという感じが強いんですが。」

K氏.「そうそう、当時のフェンダーとギブソンは互いにコンプレックスと競争心を持って技術競争していた様ですから。」「ところで、この頃のネジ類はプラスとマイナスが混在していますよね。」

私.「そうですね、他に'52のTEを2本持っているんですがそれもそうです。」「力を掛ける必要のあるネックジョイントのネジ等はプラスに変わっています。が他はマイナスのままという混成です。'54の頃までそうです。」「それからネジといえば、後のものはピックガードの止めネジとコントロールプレイトの止めネジが同じものになりますがこの頃のものは、コントロールプレイトのネジがより長いものになっています。Stratのジャックプレートのネジもそうです。」

53EQを色々なスタイルで弾くK氏。

K氏.「凄く鳴ってますね。パーツひとつとっても、ベークライトのピックガードは後年の塩化ビニールの物より硬くて薄いですから、ミュートになりにくいし、元々がこの面 積の小ささですからなおさらです。とにかくデザインも含めて、全て巧妙に設計されてます。」

私.「そうですね。ところでこの頃のTE、EQで面 白いボディの出っ張りが在るのですが、どうしてなのか分からないのですが、これです。」

N氏.「そうだね。」

私.「センター合わせでネックを振るにしてもこんなに出ている必要はないですしね。真直ぐに削ることは可能だったでしょうし 不思議なんです。」「それとボディ裏のジグ穴の埋め跡は、その後のものとほぼ同じ位 置にあります。そうそう、あとこの頃は、ネックジョイント プレートには上下があるんですよほら。」

W氏.「面白いですね。」

K氏.「軽くて硬そうな材。この音の太さはやはりこういったもの全てが出しているんでしょうね。」「それからチューナーのペグの形も後年と違いますね、真ん中の凹みがうんとある、薄い。今までここには気付なかったなー。」


私.「私は、何時もこいつばかりなんでこれが好きですが厚いほうが摘みやすいとは思います。」「それから、オールドクルソンの音はとにかく良いですから、今のものと金属部分の硬度がまるで違うし( 注.材質が違う。)樹脂のワッシャーも入っていませんから。」「まあ、硬いっていうのは、オールドの全てハードウェアーに言える事ですが。」

K氏.「あれ、このボディワンピースかな。」「レアですね。」

私.「そうです。あまりワンピースであることに意味はないと思います。50'SのFenderは普通 2ピースですし、これ以外でTE/EQでワンピースのものを持っていませんし見たことはあまりありませんね。」「このギターの音が、ワンピースであるからという理由から来るものではないでしょうし。大体ギターは複合材から成り立っているんですから。Les Paulは、その際たるものですから。」

K氏.「そうですよね。駄 目な材でワンピースに作ったって駄目ですからね。」EQを弾き続けるK氏。「この太いネック弾き易くて良いですね。」「最近のTEしか知らない人はこのごっつい音を聴いたらイメージ変わるでしょうね。」

N氏.「とにかくしっかりしているよね。」「弾かせて。」弾きながら「太い音が出るねー。」「それでいてシャキッとしているし、納得いく作りだよね。」

私.「ところでNさん、今日は何を持って来られたんですか。」

N氏「アハハハハ、このTEと、ES-355だよ。アハハハこのTE凄いでしょ!」

K氏.「ギャ−これは凄い、やめて。」

私.「やだー耐えられない。」

W氏.「これは強烈ですねハハハ。」

私.「ほらKさんが寡黙になってしまった。」このN氏のTEは、余りの凄さのためK氏と私が倒れそうになったのでまたの機会に御紹介します。

N氏.「アハハハハ次は、78年頃に新品で買ったES-355だ。色々手を入れてあるからもはや無敵!」「モノラルにしてあるし、アップも手を入れてあるよ。」

K氏、N氏のES-335を弾きながら。
   
K氏.「フロントにJBは珍しいですね、でもちゃんとバランスしている。」

N氏.「これでここ一発おいしい音を出そうという時にフロントにして全開にして使うんですよガハハハハ。」「このギタ−荒っぽい音が出したかったからこうしたんだよ。これ良くなかったからね元の音が。」

私.「JBは、七癖隠すところがありますからとっても使いやすいピックアップですよ。」

N氏.「リアは、57クラシックを付けてあるの。」「57は、名器だよ。」

K氏.「Nさんのギタ−は、どれもNさんという音がする。プレーヤーのギタ−ってそういうものですよね。」                    

N氏.「57は色気があるよね。しぼっても、全開でも良いよね。ギタ−本体が、良いギタ−でないと駄 目だけどね。」

K氏.「このギターの音、結構好きですね私。」「あっここに押さえが入っている。」

N氏.「そうそう、角度を一定にさせるためにね。」「それと爆音にした時でもまったくハウらないよ。」

K氏.「なるほど。」「生活の知恵……ですね。」

私.「タイプが違うだけで、NさんとKさんって同じオタクですね。」

W氏、私爆笑。

N氏.「よく言うよ。」K氏.「……。」

W氏、私再び爆笑。

私.「 ポイントが違うだけですよ。」

N氏.「でもまぁーそうかもしれないね。」「まあ俺は、プレーヤーだからキズとかあまり気にしないからね。もちろんギターを乱暴に扱ったりはしないけどライブとかやるとどうしても少しはキズは付いてしまうしね。」K
氏、N氏のギターを弾き続ける。

私.「Kさん。」

K氏.「あっ、今、ジミヘンが降霊していたんで……何でしょう?!」 一同爆笑。

N氏.「このギター、フレディ− キングとかやろうと思ってセットアップしたんですよ。」

K氏.「フレディ− キングのサイドギタリストって凄くうまいですよね。」

N氏.「うん凄くうまい。」

私.「Wさん今日は何を?」

W氏.「去年ここで頂いた'73のストラトを持って来ました。」

私.「綺麗でしょ。木目は派手じゃないですけど詰まっていてごつい音がしますよ。」

N氏手に取って。「俺のより重いな。重いー。」「アハハハハ。」と笑いながら早速弾きだすN氏。

K氏.「これって詰まっていて色々な事ができそうですね。安定しているし。」

私.「そうですね。それにヘッドのトラが結構凄いでしょ。」「ハードメイプルのネック。」

K氏.「この頃のフェンダーは、全体の作りというか見て受ける印象が固いって感じですね。」K氏、全体を見て「どこも変わっていませんね。」

W氏.「チェックが入りましたね。」

N氏.「弾きやすいよねこれ。」「70年代のストラトの音だね、まんま。」

K氏.「重目のアッシュボディーらしい音ですね。」

私.「これ、それ程弾かれていないからまだ新しいギターの音がしますね。」「当時この音が欲しくて。国産ギターの音はまだまだっていう感じでしたからね。レンジが狭くて、もこっとしているか、あるいはペシャペシャでしたから。」「でも、当時は、フェンダーのストラトが欲しくても私にはとても買える値段ではなかったですから。アルバイトの時給が200円程で確か22〜3万はしましたからね。楽器屋に行くとガラスのケースに入っていて、外からじーっと見ては『欲しいなー。』と思ってどれ程見に通 ったか。」「フェンダーギブソンは
まったく無理で、3万円程のグレコのエレキギターを買うのにもどれだけバイトしたことか。」

N氏.「高かったし、物がなかったよね。フェンダー、ギブソンとなるとね。」「今は良いよ、
新品からオールドまでなんでもあるからね。」「当時ES-355を買った時なんか現物が無くってさー、カタログで選んで何ヶ月も待たされてやっと手に入れたんだから。」

私.「それに買ったらもー、宝物で大事にしたものです。」

K氏.「結構、
今の人って大事にしませんからね。」

N氏.「イヤー、昔に比べたら信じられないくらい豊かにはなったからね。」「ところでKさんは何を持ってきたの。」

K氏.「私は'60のLes Paul Jr.を持ってきました。」

W氏.「出ましたね綺麗なのが。」

N氏.「これもまた凄く綺麗だねー。40年も前のものだものねー。」

W氏.「これってピックガードも縮んでいないのですね。」

私.「ギブソンの鼈甲調の樹脂って余り縮まないですよ。只環境にも因りますが内部からボロボロと崩れてきてしまう場合がありますが。」

N氏.「弾かせてよ。」弾きながら「馬力があるねー。」「P-90良いねー。」

私.「そうですね。力もあるしレンジも広いし。今日私のJr.も持って来れば良かったな。シングルカッターウェイとダブルカッターウェイの違いが比べられて面 白かったんですが。」「ダブルの方がブンと鳴るというか太い音がしますよ。」

K氏.「フロントが欲しい。」「ソープバーのスペシャル!」

私.「でもスペシャルはピックアップのマウントが違うからまた音が違いますしね。」

N氏.「やはりこのボディの形とか、材とか、ネックセットとかがこの太い鳴りになっているね。」「凄くダイレクト、良い感じ。」

K氏.「絶妙なデザインでとても好きなんですよ。」

N氏弾きながら「太くても、はっきりしていて、もこもこにならないものね。」

K氏.「押し出しが良いから、音像がはっきりするんでしょうね。」「ネックの仕込みも凄いですよ。」

N氏.「ところで、最近オーディオに凝っていてね。こんな本を持って来たんだよ渡辺さんに見せようと思って。」とオーディオの本を出されてオ−ディオ話でまた盛り上がったのですがこの辺で終わりにさせていただきます。

1998年8月

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